IR情報At a glance 世界のモノづくりを化学で支える

ダイセルとは

セルロイドは世界で初めて工業化されたプラスチックで、1900年代から日本でも原料生地の国産化が始まりました。しかし、その後の需要増加で、国内のセルロイドメーカーが乱立し過当競争や品質低下、原料となる樟脳の乱伐等を招きました。この状況を憂慮したセルロイドメーカー8社が業界再編を図り、1919年に8社合併により誕生したのが、大日本セルロイド株式会社、今日のダイセルです。ダイセルは、時代のニーズに合わせた製品の研究開発を続け、今日の主力製品である酢酸セルロースやエンジニアリングプラスチックなどのさまざまな製品を提供しています。さらに、ダイセル式生産革新をはじめ、化学プラントにおける生産技術の革新に取り組んできました。
現在は世界14か国・地域に75社、連結従業員数は約1万人規模で事業を展開しています。
当時のセルロイドメーカー8社が手を組み社会を豊かにしたように、ダイセルはお客様やパートナーと共に持続可能な社会づくりに貢献し、“価値共創によって人々を幸せにする会社”という変わらぬ志を胸に、化学の力で未来を豊かに変えていきます。

2024年3月末時点

ダイセルの3つの強み

バイオマス化学のパイオニア

1919年の設立以来、ダイセルは常に植物由来の原料から化学品を作るバイオマス化学に取り組んできました。クスノキからとれる樟脳(しょうのう)を原料としたセルロイド事業を祖業とし、その易燃性を克服した酢酸セルロースは今でも主力製品の一つです。1970年代のオイルショック後には、脱石油を掲げたC1化学という国家プロジェクトにおいて、いち早く石油に頼らない原料転換に取り組みました。今、地球環境を含む社会のサステナビリティを守るため、改めて植物由来化学が注目を集めています。ダイセルは再生可能な資源を元に、人々の暮らしと地球の豊かさに貢献する製品を創っています。

創業以来培ったユニークな技術

1. アセチルチェーンアセチルチェーンを築いた技術

当社は国内唯一の酢酸メーカーであり、酢酸からアセチルケミカルや酢酸セルロースなど酢酸誘導体を製造する一連の特徴あるアセチルチェーンを築き上げ、世界的にも強いポジションで事業を展開しています。

2. セルロース天然素材であるセルロースの物性コントロール技術

創業時から長年蓄積したセルロースに関する知見や技術を活かしアセテート繊維やフィルター原料、液晶パネル用フィルム原料、化粧品原料など酢酸セルロースを中心に高機能な製品を幅広い分野に展開しています。
酢酸セルロース

3. One Time Energy®長年蓄積した技術を新分野へも展開

自動車エアバッグ用インフレータの事業化以来、ガス発生剤から一貫生産を続け、自動車の安全に貢献してきました。インフレータ製造で培った技術を「安全、確実、瞬時に、一度だけ最適なエネルギーを生み出す、One Time Energy®」と定義し、この技術の幅広い分野での応用に取り組んでいます。
One Time Energy®

4. エンジニアリングプラスチック幅広い製品ラインナップと技術ソリューション力

高い世界シェアを持つエンジニアリングプラスチックに加え、汎用樹脂からスーパーエンジニアリングプラスチックまで幅広いバリエーションの製品ラインナップを持つのが当社の強みです。また、グローバルにテクニカルソリューションセンターを構え、培ったノウハウやデータを駆使し、顧客への技術ソリューションを提供しています。
エンジニアリングプラスチック

ダイセル式生産革新による生産効率の追求

当社の化学メーカーとしてのモノづくりの基盤を支えるのがダイセル式生産革新です。熟練オペレータが持つ約840万の工場運転に関するノウハウを可視化し、運転支援システムに落とし込むことで、生産効率を約3倍に向上させました。さらに2020年には、これにAIを用いて進化させた「自律型生産システム」を開発しました。安全・品質はもちろん、エネルギー使用の最適化でCO2排出量の削減にも寄与するほか、設備の変調を事前に予測しトラブルを防ぎ、究極の生産効率を追求します。国内グループ会社の工場へ導入を進め、作業負荷低減によって捻出した時間をより創造的な仕事に使うことでモノづくりの競争力を高めます。

ダイセル網干工場での実績

ダイセル式生産革新

連結売上高・営業利益

  • 2024年3月期連結売上高5,581 億円
  • 2024年3月期連結営業利益624 億円

セグメント

ダイセルは5つのセグメントで事業を展開しています。

2023年3月期連結売上高グラフ図
2023年3月期連結営業利益グラフ図 2023年3月期連結営業利益グラフ図

2024年3月期実績

メディカル・
ヘルスケア事業

QOLが重視される社会に、安全で高品質なヘルスケア素材や医薬品開発に関わるソリューションを提供

主要な
事業
主要な製品・
サービス
ライフサイエンス キラルカラム、キラル試薬、受託分離、分析サービス、遺伝子解析研究試薬、
医薬品添加剤、新規投与デバイス
ヘルスケア 化粧品原料(ポリグリセリン誘導体、酢酸セルロース真球微粒子(BELLOCEA®)など)、機能性食品素材(エクオール、こんにゃくセラミド、ウロリチンなど)

QOL:Quality of Lifeの略。物質的な豊かさだけでなく、精神面も含めた生活の質

スマート事業

人々の暮らしの快適さや技術革新を支える電子材料市場に新たなソリューションを提供

主要な
事業
主要な製品・
サービス
ファンクショナルプロダクツ 脂環式エポキシ、カプロラクトン誘導体、オプティカルレンズ
アドバンストテクノロジー フォトレジスト材料、電子材料向け溶剤、有機半導体デバイス、機能フィルム

セイフティ事業

高いグローバルシェアを誇るエアバッグ用インフレータ事業で培ったOne Time Energy®の技術で、幅広い産業に安全・安心を提供

主要な
事業
主要な製品・
サービス
モビリティ 自動車エアバッグ用インフレータ
インダストリー 電流遮断器、シートベルトプリテンショナー用ガス発生器(PGG)

マテリアル事業

アセチルチェーンを主軸とした多彩な製品群、ユニークな製法を強みに幅広い産業に価値を提供

主要な
事業
主要な製品・
サービス
アセチル 酢酸、無水酢酸、アセテート・トウ
ケミカル 光学フィルム用酢酸セルロース(TAC)、酢酸セルロース、1,3-BG、
ケテン誘導体、エチルアミン、酢酸エチルなど有機溶剤

エンジニアリング
プラスチック事業

エンジニアリングプラスチックのパイオニアとして培った技術力で、幅広い産業に高機能で付加価値の高いソリューションを提供

主要な
事業
主要な製品・
サービス
ポリプラスチックス ポリアセタール(POM)、ポリブチレン・テレフタレート(PBT)
ポリフェニレン・サルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)
環状オレフィン・コポリマー(COC)
ダイセルミライズ AS樹脂、水溶性高分子、包装用バリアフィルム

ダイセルのあゆみとこれから

1919年の設立以来、ダイセルには、時代と共に変容する社会のニーズに応え、サステナビリティに貢献する製品を開発・提供することで、発展を遂げてきたという歴史があります。
また、将来に向けては、2020年度にサステナブル経営方針を軸とした第4次長期ビジョン『DAICEL VISION 4.0』を策定し、2021年度からは循環型社会構築への貢献をゴールに掲げた中期戦略『Accelerate 2025』を始動しています。ダイセルグループはこれからも企業価値向上と循環型社会構築に貢献していきます。

1919年~

セルロイド生活の豊かさの向上

プラスチックの草分け的存在として国内化学産業の発展に貢献

酢酸セルロース安全の確保

1938年 硝酸セルロースの易燃性という大きな課題に対し、酢酸セルロースを事業化

セルロース事業、有機合成事業の誕生

当社は1919年にセルロイド会社8社が合併して設立されました。当初からセルロイドの不燃化に取り組み、アセテート・プラスチックを開発。1935年に新井工場を新設し、1938年には原料となる酢酸セルロースを酢酸から一貫生産する体制を整え、セルロース事業、有機合成事業の礎を築きました。

1950年代

三酢酸セルロース(TAC)映画・写真フィルムの不燃化・高機能化

1953年 TACの生産を開始。後の2000年代に光学フィルム用途としても大きく成長

セルロース事業の本格化と火工品事業のスタート

1950年に網干工場でアセテート・プラスチックの生産が本格化、1953年には富士写真フイルム株式会社と研究を重ね三酢酸セルロース(TAC)の製造を開始し、1958年に堺工場でたばこフィルター用のアセテート・トウの製造を開始するなど、セルロース事業を拡充させました。また、硝酸セルロースが火薬の原料になることから火工品事業が発展し、1954年に播磨工場を設立しました。

現 富士フイルム株式会社

1960年代

ポリアセタール(POM)金属代替への挑戦

1964年 エンジニアリングプラスチックの製造開始。自動車など様々な製品の金属代替により、部品の軽量化、環境負荷低減に貢献

石油化学事業への参入

1960年代には日本初の石油化学コンビナートに参画、大竹工場を設立し石油化学事業をスタートさせました。合成樹脂事業においては、AS樹脂・ABS樹脂の製造開始に加え、米国企業と合弁でポリプラスチックス株式会社を設立しエンジニアリングプラスチック事業に着手しました。

2020年度にダイセル完全子会社化

1980年代

メタノール法酢酸酢酸業界の再編

1980年 事業の根幹となる酢酸の製法としてメタノール法を導入、酢酸業界の再編に尽力

酢酸事業の基盤強化

構造不況への対応と基盤事業強化を目的に、当時の最新技術であった、メタノール法酢酸を事業化することで、石油に依存しない原料への転換に取り組み、C1化学への参入を果たし、酢酸業界の再編を実現しました。

1970年代のオイルショック時に脱石油を掲げたC1化学(シー・ワン・ケミストリー)という国家プロジェクト

キラルカラム安全な医薬品の提供

1982年 副作用につながる物質を分離するキラルカラム製造開始

自動車エアバッグ用インフレータ安全・安心の提供

1988年 自動車エアバッグシステムのキーパーツを供給し、衝突事故時の乗員の安全確保に貢献

各事業の海外への積極展開

1980年代は、欧州・米国・アジアに現地法人を設立。1988年に自動車エアバッグ用インフレータ製造子会社を設立。1990年に光学異性体分離事業の拠点を米国に設立し、 1992年には中国の合弁会社でアセテート・トウの生産を開始しました。

2000年代

自律型生産システム生産性の向上

2000年 ダイセル式生産革新を確立
2020年 ダイセル式生産革新をAIにより進化させた自律型生産システムを開発

インフレータやTAC事業の拡大とダイセル式生産革新の横展開

インフレータ事業では、世界6カ国に拠点を展開しました。また、映画などのフィルム原料であったTACを光学フィルム用途へ展開するなどディスプレイ事業も拡大しました。技術面では、網干工場で確立したダイセル式生産革新の全社展開を進めるとともに、プロセス・イノベーションを加速、2017年には研究開発と生産技術の機能を集約し、イノベーション・パークをオープンしました。

2021年〜

中期戦略『Accelerate 2025』が始動

新しいニーズの発掘やお客様・お取引先様と一体となった価値共創による新事業創出、環境にやさしい新技術によるバイオマスプロダクトツリーの構築など、ダイセルらしい取り組みで循環型社会の構築に貢献します。

海洋生分解性酢酸セルロース海洋プラスチックごみ問題の解決策に

天然由来で生分解性を有する酢酸セルロースの海洋での生分解性を大幅に向上させた、環境にやさしい製品を開発

One Time Energy®による製品展開既存技術の機能の意訳で新しい用途開拓へ

安全、確実、瞬時に、一度だけ最適なエネルギーを生み出す技術を医療、自動車などの産業へ応用

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